口の中の健康は、虫歯を防ぐことや、虫歯を治すことだけではありません。良好な噛み合わせと整った歯並びも歯の健康にとって大切なことです。
矯正歯科治療は見た目を良くするだけでなく、機能的な問題(噛み砕く能率、あごの運動)を改善させたり、歯そのものの健康にも関わっています。
歯並びの乱れや悪い噛み合わせのままでは、噛み砕く力(咀嚼力)が落ちて、消化器官に負担がかかったり、歯のすみずみまでハブラシが届きにくいことから虫歯や歯肉炎になりやすいリスクがあります。
矯正治療を行い歯並びがきれいになることで、虫歯や歯周病になりにくくなり、歯も長持ちすると言えます。
上下の歯の噛み合わせを改善させることも、矯正治療の大切なポイントです。
噛み合わせが悪いと、食べ物を細かく噛めなかったり(咀嚼)、あごの発育に好ましくない影響を与えたりする場合があります。良い噛み合わせとは、上下の歯が正常に噛み合っているだけではなく、噛み合わせた時に、あごの関節の位置が安定した状態になっていることです。
また、上下の歯の噛み合わせの方向が異なると、歯には異常な力が働いて歯の寿命を短くします。このような場合には異常な力の方向を変えるために矯正治療は大きな役割を果たすことができます。
歯並びの不正を治療します。
歯が重なり合って凸凹に生えている乱杭歯(らんぐいば)は叢生(そうせい)と呼ばれています。下の前歯で多くみられる歯列不正ですが、他の人からは見えないので放置されがちです。しかし、歯磨きがしにくいので歯垢(プラーク)がたまりやすく、虫歯や歯周病にかかりやすく歯の寿命を短くします。
矯正治療は「歯並びをキレイにする」、「歯の凸凹やすきっ歯を治す」といった、見た目だけの歯並びを整えるだけではありません。上下のあごの骨と噛み合わせの状態、頭蓋骨と顔のバランスなど、総合的な症状の分析をして、一人ひとりの患者様にあった治療を行います。
矯正治療前(叢生) |
矯正治療後 |
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下の前歯は凸凹に生えていて、歯がお互いに重なりあったりしています。そのために歯ブラシの毛先が当たらないところができて、十分に歯と歯の間を磨くことができません。 その結果として歯と歯の間の歯肉が炎症を起こして出血しています。 これは歯周病の始まりで、放置すると歯を支える支持組織である骨が吸収されて歯を早く失う原因となります。 |
治療後は下の歯がきれいなアーチ状に並んで歯と歯の重なりもなくなりました。 この状態ですと小さめの歯ブラシを使えば前の歯の裏側をよく磨くことができます。 歯肉が炎症を起こしたり、歯と歯の間にムシ歯ができたりする心配はなくなります。 |
側貌(プロファイル)とは、横顔の見た目のことです。例えば、出っ歯(上顎前突)の場合、側貌を見ると口元が出っぱっていたり、上の前歯と下の前歯の間に下唇が入り込んでいることがあります。受け口では、舌唇が突き出ていたり、めくれて見えます。矯正治療で歯並びが改善されることで、横顔自体にも変化が起き、見た目のバランスが改善されます。
噛み合わせが悪いと、無意識のうちに口内の片側だけでものを噛んだり、あごをずらして噛んでしまいます。この状態が続くと、ずらしたあごや口の片側の筋肉が硬直してしまい、顔の輪郭が変形してしまうことがあります。
矯正治療を行うことで、こうした顔の輪郭を元に戻すことが可能です。
また、顔を横から見て鼻の先端とあごの先端を結んだラインをE-ライン(エステティックライン)と呼び、一般的にこのE-ライン上、あるいは若干内側に唇が位置することが、理想的であるとされています。人の顔は千差万別ですが、E-ラインは一つの目安になります。出っ歯、受け口の程度が大きい方はこのラインから大きく外れている場合が多いものです。歯列矯正を行ない、歯並びを治すことで唇を理想的な位置に近づけることができます。そうすることで自然で素敵な笑顔を作ることができます。E-ラインはいわゆる美しい口元の基準として用いられ、矯正治療の診断の重要な基準であり、またこの改善が治療目的の一つでもあります。
〈理想的なE―ライン〉
<下顎が出ている> |
<正常なバランス> |
<口元が突出している> |
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[不正咬合の種類] 骨格的な下顎前突や前歯の反対咬合(受け口)など |
[正常なバランス] 上下の唇が鼻とあごを結んだラインとほぼ一致しています。 |
[不正咬合の種類] 上顎前突(出っ歯)や上下顎前突(上下の前歯の突出) |